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第3回 『ターミナルケア(終末期医療)』とは

[2020.06.05]

私もこれまで医師として多数の患者さんの最後を看取ってきました。患者さん・ご家族にとって最後を迎えることはとてもつらいことです。私も患者さんにとって苦痛がなく安心して最後を迎えられるように試行錯誤しながらターミナルケア(終末期医療)にアプローチしてきたつもりですが、すべての患者さん・ご家族に納得していただけたのかと自問自答することもあります。

私がターミナルケアの患者さんに接する際に、記憶の中に思い出される状況があります。それは、私の祖母のことです。祖母は乳癌に罹患し術後15年以上たって再発しました。発見された時には既に手遅れの状態であり、自宅にて療養をしておりました。私は高校生でしたが日々、やせ衰えて、苦しむ祖母の姿をみては『どうにかならないものか』とやるせない気持ちでおりましたが、家族全員で看病することで、祖母が一人で苦しむよりは安心してもらえてのではと思っています。最後は自宅で看取りましたが、そのときの経験から患者さんにとっては、家族と日々接しながら介護されることがどれほど心強く、安心を与えることであると実感しました。と同時に介護する家族の大変さもわかりました。

ターミナルケアにおいて医師、看護師などの医療スタッフの力だけでは不十分であり、ご家族のサポートがとても重要です。そのために、患者さんの病状について、ご本人・ご家族が理解し日々の生活を安心しておくることができるようにケアを行っていきたいと考えています。

現在、厚生労働省において、終末期医療に関するガイドラインが検討されています。海外では、尊厳死、安楽死などがガイドラインによって定められている国もありますが、我が国ではこれまで終末期医療のガイドラインがなく、ともすると回復の見込みのない患者さんに対して尊厳を無視するような、無駄な延命治療が行われている状況が見受けられます。人が死に臨む際には、さまざまな病状、家族背景を含む状況、生活環境の相違などがあり簡単にガイドラインでは決めかねる状況もあると思いますが、一方では患者さん・ご家族が尊厳死を望み自分の最後を決めておられる方もいます。今後、高齢化社会が進むなかで医療者、患者・ご家族に了承、納得されるガイドラインの選定が必要と思います。

私は患者さん・ご家族の意志を尊重し、尊厳をもった最後を迎えさせることも医師としての大切な仕事であると考えています。今後、在宅・入院でのより良いターミナルケアが行えるようにスタッフ・患者さん・ご家族と一緒に考えていきたいと思います。

院長 小室 理

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